「故宮」と聞けば台北の本院を思い浮かべる人が多いですが、もう一つの故宮──南院が静かにアジアの美を語りかけています。
■ 南院の誕生とその背景
台湾の嘉義・太保市に2015年に開館した「国立故宮博物院南部院区(南院)」は、単なる分館ではありません。台北本院が主に中国王朝の文化財を収蔵しているのに対し、南院は**「アジア芸術文化博物館」**として構想され、東アジア、東南アジア、南アジア、西アジアまで、アジア全域の芸術と文化を横断的に展示・研究しています。
誕生の背景には、文化資源の南北格差の是正と、台湾南部の文化発展を促すという目的もありました。それはまさに、文化の多元性と平等性を象徴する存在なのです。
■ 建築自体が語る「アジア」
建物のデザインもまた見どころ。曲線を多用した有機的な建築は、象・馬・龍をモチーフとし、橋は草書体の筆跡を思わせる形状で、建築そのものがアジアの思想や美意識を表現しています。
翠玉白菜の展示(南院)
翠玉白菜が南院に出張展示された際の様子
■ 絶対に見逃せない展示
- 「仏陀の形と影」展:インドから中国、東南アジアまで、仏教美術の多様性を立体的に捉えた展示。
- 織物と茶文化の展示:中央アジアの絨毯、インドのサリー、中国の茶器など、生活文化の美を紹介。
- 肉形石・翠玉白菜の出張展示:台北本院の“スター”たちも、特別展で南院に登場することがあります。
■ 台北から南院へのアクセス(新幹線利用)
- 台北駅から台湾高鉄(新幹線)に乗車し、約1時間30分で嘉義駅へ。
- 嘉義高鉄駅の2番出口を出て、黄9・市区105・106・7702・7235などのバスに乗車(約30分)。
- バスは「故宮南院」行きで、ICカード利用で約21元。
- タクシー利用なら約100元(4人で割ればバスと同等)。
■ 文化の旅路の交差点として
南院は、「文化は国境を超える」ことを体現する場所です。展示物の背後にある思想や技術、そして人々の営みに触れることで、私たちは現在をより豊かに生きるヒントを得られるのではないでしょうか。
次に台湾を訪れるなら、南へ向かってみませんか。そこには、知らなかった“もう一つのアジア”が待っています。
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